古代ポリス社会の「評議会制」について


― アリストテレス『アテナイの国制』より ―




はじめに

 古代アテナイのポリス国家における直接民主政治は、市民一般参加による民会と、市民により選ばれた評議会によって運営されていた。これはアリストテレスが当時の貴重な政治に関する資料『アテナイの国制』に明らかに記されている。このことからも、民主主義の原点として評議会制が運営され、密接な関係をもっていたことが証明できるであろう。

 アリストテレスのこの貴重な資料によれば、古代アテナイの評議会制はおよそつぎのようなものであったと描かれている。
(以下、アリストテレス『アテナイの国制』 第42章〜第49章 その他より抜粋)

 


(評議員の構成と選出方法)

1)各部族から50名ずつ、合計500名が任意の抽選により選ばれる。
2)さらにその500名の中から、抽選で50名の当番評議員(運営委員)が選ばれる。彼らは直接評議会の運営や評議会および民会の招集、スケジュールの詳細を決定する役割を担う。
3)さらにこの評議会運営委員会の中から、一人の議長が抽選により選ばれる。彼の任期は1昼夜だけであり、再任は許されない。
4)評議会運営委員会は、構成メンバー以外の部族の中から、それぞれ1名、合計9名の幹事を抽選で選び、その中から1名の幹事長を選出する。幹事によるこの幹事会は、評議会の議事進行の監督をする。議事の上程、挙手採決の判定、会の解散などの作業を担う。幹事長の再任は認められない。


(評議会の役割と権限)

・参政権に与ることのできる18歳以上の市民の資格審査。
・大部分の役人、とりわけ金銭を扱う役人の監査。場合によれば陪審裁判に控訴し、弾劾することができる。
・新たに選出される評議員の資格審査。
・公有物である船舶の管理、建造。
・公共建築物の検査。
・他の諸官庁と協力し、さまざまな事務処理に関わる。以下の事務官の選出(すべて抽選)に立ち会う。
 (1) 抽選により10人の財務官(金品、国庫の管理をする役人)を選ぶ。
 (2) 同じく各部族から1名、計10名の契約官(請負契約、鉱山の管理および税の徴収にあたる役人)を選ぶ。
 (3) 抽選による収入役、会計検査官10名と助役の選出。
 (4) 執務審査官、補佐役の選出。
 (5) 10名の神殿修築官の選出。
 (6) 10名の市域監督官の選出。
 (7) 市場監督官〔10名〕、度量衡監督官〔10名〕、穀物監督官〔10名〕、取引所監督官〔10名〕の選出。
 (8) 獄中監督官(罪人の死刑、釈放、国有地の決定などにあたる役人)11名の選出。
 (9) 2部族ごとに1名、合計5名の提訴提起官(民事事件の起訴をする役人)の選出。
 (10)各部族から4名を抽選で、40人委員会のメンバーを選出する。この委員会は民事事件以外の訴訟の提起に当たる。
 (11)5名の道路建設係(道路の保全と維持の担当)の選出。
 (12)評議会運営委員会の書記官の選出。
 (13)贖罪の犠牲のための犠牲委員の選出。

・裁判所において没収され競売に付せられた土地や家屋の物件の登録。
・馬の審査。飼育法が適切でなければ公的飼育料の差し止め、刑罰を科する。
・騎兵に付属して戦う歩兵の審査。拒否者には給料の支払い停止処分を科する。
・働けない不具者の審査。審査対象者は、国家から相当の扶養料が支払われる。
・民衆の罪状を決定する。(当初はこの権限があったが、後に民衆によって権限が廃止された)


(その他の重要事項)

・民会(民衆による直接政治機関)は以上の評議会の権限の最終決定権をもつ。評議会は民会のために事前に評議し、民会がその決議を行う。
・上記の監査、検査において違法や不正が発覚したときは、評議会は当事者を民会に告発し、有罪が決定すれば陪審裁判所に送検することができる。



<コメント>

・重要なことは、あらゆる公職に携わる人々の役職は、自己申告でもなく、また選挙でもなく、すべて単純な抽選によって選ばれていたということである。民主主義的決定とは、すべての人間が公共の決定に参加することによって現実のものとなる。したがって、すべての人間に政治参加が義務付けられると同時に、その機会を与えられているのが”真の民主主義”であるといえる。


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