ドイツ緑の党・同盟90の2005・選挙キャンペーンを取材して

 

 

 

 

今本 秀爾  (NPO「エコロ・ジャパン」代表)

 

 

 

 

 

はじめに 〜ドイツの選挙キャンペーンについて〜

 

 

ドイツの選挙戦は、予想以上に「静かな選挙」という印象であった。

町中どこを見てもポスターが張り巡らされているだけで、街宣カーも候補者の駅頭街宣もなければ、チラシやビラの配布も

行われていない。ましてや桃太郎とか、自転車街宣、電話かけ、戸別訪問、握手作戦、こうした日本ではおなじみの選挙戦も

一切行われない。ポスターやたまに広場で見かける選挙スタンドが目に付く以外は、街中を見渡しても、いったい本当に

選挙戦をやっているのかと疑うような、普段と変わらない街の光景である。

しかし、街中で歩いている人の会話も、電車やバスに乗っている人の会話も、よく小耳に挟めば選挙の話で持ちきりである。

「今回はどの党に投票しようか」「あの党の政策はこうだからな」といった会話が巷で日常のように交わされている。

そして毎晩どこかの地域のカフェや教会といった公共の場で、候補者を交えた選挙集会が行われている。

あとはTVやラジオが盛んに党首討論番組や代表者へのインタビューを毎朝毎晩繰り返し、有権者の関心を煽りたてている。

議論好きの国民であるが、議論の文化はこうした政治文化として自然と息づいていることに、われながら納得させられた次第であった。

 

 

 

1.街中で選挙スタンドとグッズの提供

 

ならば、ドイツの選挙戦ではいったいどんなキャンペーンが行われているのであろうか。最初に述べたとおり、空港から降りた途端に

各政党の大きなポスターがやたらと目に付いた。それも他党を平然と揶揄する文句も堂々と書かれている。

ドイツの選挙は、各政党がそれぞれのシンボルカラーを持ち、候補者別というよりは政党別、政策や理念別で投票するという習慣が

定着しているために、有権者にわかりやすい仕組みとなっている。

スター的存在の候補者を除いて、それぞれ地元の選挙区の候補者各個人の顔や知名度、人格で投票するのではないからである。

 

しかし街中の広場やイベント会場には、各政党のシンボルカラーのパラソルがかけられた選挙スタンドが立ち並ぶ。そこで各政党の

リーフレットやマニフェスト、選挙グッズなどを無料で配布している。しかしラウドスピーカーで宣伝するといった宣伝合戦は行われない。

あくまで静かで有権者の自主性に任せた選挙活動である。

 

 

  ミュンヘンで遭遇した、緑の党の選挙バースタンド

 

 

 FDP(ドイツ自由民主党)の選挙スタンド

 

 CSU(キリスト教社会同盟)はこんな感じ

 

 SPD(ドイツ社会民主党)の選挙スタンド(ベルリンにて)

 

 

             

2.ポスター合戦

 

ドイツの公職選挙法では、ポスターの種類や分量、内容にまで規制はないため、各政党による自由なポスターやリーフレットがあちこちで

掲載&配布されている。それでも政党の顔になる人物や、各候補者の写真入りのポスターが結構目立った。

 

 

    

緑の党のポスター(男性の賃金で女性の雇用を!)   上はSPD、下は緑の党候補者のポスター     ラフォンテーヌ左派連合代表(上)とフィッシャー外相(下)のポスター

 

  

FDP(ドイツ自民党)のポスター(上)、フィッシャー外相のポスター(下)      FDPのベルリン選挙区の候補者のポスター

 

CDUのポスター「7年間も赤緑政権 −ドイツは政権交代が必要」

 

 

 

【参考】 同盟90・緑の党のポスターを分析する(リンクサイト)

 

 

 

3.ドイツ緑の党の選挙キャンペーン 〜オリジナル戦術の登場〜

 

 

そんな中でも、今回ドイツの緑の党は、若者の関心を喚起するために、さまざまな選挙キャンペーンの工夫を行っていた。

選挙戦中、緑の党はさまざまなグッズやフライヤー、ポスターで有権者の関心を引き付けるとともに、ベルリンへの旅行者ツアーや

選挙バースタンドの設置、人気者のフィッシャー外相を乗せた全国バスツアーの企画、ホームページによる広報やブログを使った

支持者へのアピール、緑のベロタクシー、48時間耐久トーク・ラリーなど、さまざまなオリジナル戦術に力を入れた。
ある大手新聞調査によると、34歳以下の有権者では緑の党への支持率が13%ともっとも高く、依然若い世代に緑が支持を受けて

いることを裏付けた。

 

ベルリンの党本部では、「パーセント生産工場」(Prozentfabrik)プロジェクトが発足した。これは緑の党の基幹政策を国民が支持している

ことを裏付けるため、大手雑誌社や新聞社、リサーチ会社によるランダムな国民へのアンケート結果をもとに、高い数値結果を残した項目について、

ポスターその他で一般公表するというものであった。したがって他政党のポスターと違って、今回街中には「59%」「77%」「79%」といった

奇妙なポスターが今回とくに目に付いた。

 

その中でも代表的なものは、次のようなものである:

「ディーゼルエンジン用フィルターを国が促進させるべき」=70%、「高所得者への税金強化をすべき」=75%、「環境保護は重要である」=92%、

「全日制学校の導入を求める」=80%、「イラク戦争への派兵阻止を継続すべき」=86%、「ドイツの気候変動政策をさらに促進させる」=56%、

「太陽光エネルギーは未来のエネルギーである」=85%、「原発の存続反対」=79%、「3歳以下の子どもにケアサービスの強化を求める」=59%、

「CDUの定率所得課税に反対し、社会保障を強化すべき」=66%、「遺伝子組み換え食品に反対」=79%、「フィッシャー外相の外交政策に満足」=63%。

 

 

 

  

                       

ドイツ緑の党の「パーセント生産工場(Prozentfabrik) キャンペーン」によるポスター

 

 

 

 

   

緑の党のベロタクシー(ベルリン・連邦議事堂前にて)             候補者とともに(ニーダーザクセン州) 「石油社会からの脱出」

 

 

  ヨシュカ・フィッシャー全国縦断バスツアーのバス

 

 

    

 

「48時間耐久トークラリー」の様子から(ベルリン市街にて)

 

  

ヤング・グリーンズの選挙キャンペーン「HELP 私の氷が溶ける!」 レナーテ・キュナスト農業大臣を応援する「ホルスタインTシャツ」キャンペーン

 

 

 

次頁につづく