ECOLO JAPAN
Green Policy Network for Sustainable Society


    ■代表挨拶 〜エコロ・ジャパンのあゆみと展望〜


    代表  今本 秀爾 (国際環境ジャーナリスト、社会評論家)
 
 「持続可能な社会」という言葉が叫ばれて久しくなりましたが、地球温暖化の加速、エネルギー資源の枯渇、戦争と暴力、貧困格差の増大、飢餓や病弊、食糧や水の不足と安全性の危機などなど、地球上いたるところでそれは実現に程遠い現状が露呈されています。
 しかしここで私たちが絶望し、将来を諦めてしまっては、現状および次世代への責任放棄と自らへの大きな重荷を増大させるだけであり、事態は悪化する一方です。これらの世界的危機的現状に対しては、一刻も早く手を打たねば、私たちは自らの生活を自ら破壊し、苦しみと自己犠牲の中に自らを追い詰めるだけとなるでしょう。

 「持続可能な社会」とは、将来世代にできるかぎり負の遺産を残さない「人間の経済活動」を旨とする社会です。その実現のためには、企業や個人の自主的取組みや教育的・自発的な啓蒙活動や実践的活動だけでは限界があります。経済全体の発展の方向性を持続可能なものにシフトしていくための、政策立案やプランニング、法律制度の構築や整備が不可欠です。 

 一方ですでにこの「持続可能な社会」概念が定着し、取り組みが進んでいる欧州の先進社会では、エコロジー・社会的公正・自己決定・参加民主主義といった基本理念にもとづく「緑の政策」へのシフトの必要性や要望が提唱され、実現されてきました。これらの基本理念はそれぞれ、「持続可能な社会」の実現のためには相互に切り離せない概念です。これらは日本でも最近ようやく各ジャンルの市民運動やNPOなどにおいて話題にのぼるようになってきました。しかしその実現プロセスについてはまだ具体的な展望は見えて来ず、戦略論についての意見も一致していないように思われます。
 残念ながら資金収集能力と専門的能力(政策立案能力)不足という点で、こうした「緑の政策」の実現をめざす日本の市民運動やNPOの多くは大きなハンディを背負っています。さらに、個人的に私はこの数年来、さまざまな市民運動団体のイベントや会合に参加してきましたが、そこでは自分がもっとも熱をあげたい本格的な政策論議がほとんどなされず、いつも運動論や組織論の話ばかりに終始し、状況が遅滞したままであることに閉口せざるをえない状況がありました。

 環境問題に限らず、これまでの日本の市民団体、市民運動やNPOの活動は、主に政策決定過程の「外部」で特定のシングル・イッシューに対する抗議・反対運動が中心でした。しかしこのような政策決定過程の「外部」で実施される市民運動やNPO活動、草の根運動のネガティブ・キャンペーンはすでに限界がみえています。それよりもこれらの市民発信のアクションが、建設的でかつオールタナティブな代案を提示し、実現可能な政策提言へと結びつけることができなければ、当該の問題に対する漸進は見込めません。そこでたとえば80年代以降に急速に発展した世界のグリーンズ(緑の政党)の運動のように、当該の問題に関心が高く、経験豊富なエコロジスト、アクティビストがネットワーキングし、さらに直接自ら政策立案に関わるといった試みが、今この日本においても必要な市民アクションとして求められていると考えます。

 そこで筆者は数年前(2002年)、こうした昨今の市民運動に欠落している政策シンクタンク的な役割を担う恒常的組織を、個人のネットワークを基盤に構築するという独自の構想を立ち上げました。それも特定の環境NPOやシンクタンク組織を設立するということではなく、「持続可能な社会」「公正な社会システム」の構築という人口に膾炙した言葉で、それを実現するためのエコロジー・社会的公正・自己決定・参加民主主義などを柱とする「緑の政策」を実現するための政策提言を行う、有志による個人間のネットワークを立ちあげる、という趣旨で呼びかけを行い続けました。
 その結果、2003年1月に東京地区在住の環境畑の人たちを中心に、20代、30代の若手の大学教員、大学院生、民間シンクタンク社員、NPOスタッフ、地方公務員などさまざまな職業層の人々が集まり、欧州諸国の環境政党(緑の党)の先進的政策提言やEUレベル(欧州委員会・欧州議会)の環境政策などを定期的に調査・報告するとともに、メーリングリストなどで意見交換する「緑の政策ネットワーク21」を設立することで話がまとまりました。
 その後、5月と7月に主催した公開研究会ではのべ40名近くの参加者が集い、現在の内外の環境政策についての先進事例報告と突っ込んだ議論を行いました。また東京と千葉のメンバーを中心に、地域自治体の環境政策への取組みを調査・政策提言するプロジェクトチームが結成され、現地視察なども実施しました。
 2004年に入り、本団体は、緑の政策ネットワーク「エコロ・ジャパン」と改名し、国や地域を問わず、環境派の議員や候補者および政府・行政機関(官庁・自治体)ならびに各政党に対する実践的な政策提言・ロビイング活動を行い、主に立法過程(政策形成過程)に働きかける「持続可能な社会のための政策をめざすネットワーク」としての方向性を確立することで合意が成立。2004年7月の参議院選挙に向けて、「緑の政策」を網羅した「緑のマニフェスト」提言を作業委員会メンバーとともに立案し、候補者や政党へ提言するロビイング・アクションを実施しました。
 今後のエコロの課題は環境・エコロジー分野を中心とした「グリーン・マニフェスト」のさらなる充実と完成をめざし、ロビイング・アクションを継続することと同時に、たとえば公正な雇用政策、社会保障政策・参加民主主義政策などの「持続可能な社会政策」分野についても随時、専門家やレベルの高い活動家のネットワーキングを実現させること、またそれらを通じた政策論議の深化のための研究調査を重ね、関心の高い人々に向けてそれらを普及・啓発する活動を大々的に展開することです。 今後も皆さまの多大なるご支援・ご協力・ご参画を心よりお待ちしています。


(2004年4月25日 筆、2006年6月15日 一部改訂)


   ◆代表 自己紹介

   今本 秀爾 (いまもと しゅうじ) Imamoto Shuji
    
  大阪市生まれ。大阪外国語大学ドイツ語学科を卒業後、早稲田大学大学院で哲学を、大阪大学大学院および東京大学大学院で社会哲学分野を学ぶ。ドイツの哲学者カール・ヤスパースの先駆的研究業績をはじめ、現代リベラリズムや民主主義理論の哲学的考察に関する優れた業績を評価され、海外数十カ国の大学や研究機関、学会で報告や講演活動を展開。
 日本学術振興会特別研究員(PD)を経て、1998年に学術界を離れ、欧米の市民運動やNPO活動のフィールドワークに乗り出す一方で、ネットを活用した新しい市民的政策提言活動「インターネット政治フォーラム」を発足する。

 その後、2001年4月にキャンベラ(オーストラリア)で開催された「グローバル・グリーンズ世界大会」に参加。以降、世界各国各地域の緑の政党団体や主要活動家との交流や情報提供活動を続ける一方、「グローバル・グリーンズ憲章」を邦訳、日本における「政治的エコロジー」運動の新たな可能性について様々なメディアで提言活動を継続するなど、この分野における第一人者として活躍中。その後、関連市民団体とは独立した形で、2004年「エコロ・ジャパン」を創設。政策に特化した、専門家を巻き込んだ政策シンクタンク・ネットワーク的な「新しい合理的−戦略的市民運動」の可能性を追求している。

 専門はヨーロッパ近現代の社会・政治哲学、民主主義理論、市民運動組織論。現在は関西地域を中心に複数の大学や専門学校の講師として哲学・論理学・環境倫理思想などの教鞭をとる他、オーストリアやポーランド、ドイツ、カリフォルニアなどの大学機関にも期間客員教授として出講している。その他、複数の地方自治体議会議員の政策アドバイザーとして政策立案にも助言・協力を行なっている。

 主著 『リベラル・パワー 日本病理社会・再生の条件』(郁朋社)、『欠陥議員』(共著、創芸出版)、『国会議員の成績表』(同)、『二十一世紀への思想』(共著、北樹出版)、『批判的合理主義 第1巻』(共著、未来社)など。
 これまでに執筆した論文・レポート・コラム・翻訳等は数百点にのぼる。ネット関連の討論ウェブ上でも活躍中。

◆個人ホームページ: http://homepage3.nifty.com/imashujapan/