欧州議会「緑の党」会派・自由議員連盟(EFA)による「2005年WTO香港閣僚会議」に関する報告

(編集&翻訳@: NPOエコロ・ジャパン)

 

 

ドーハ以降、どこにもたどり着いていないのではないか? ―― 進路を変えるべきときが来た!

 

貿易自由化? ―― 人々と環境にとって健全な場合に限る!

 

香港では何の取り決めもなかった? ―― ひどい取り決めよりましだ!

 

 

2005年12月の第6回WTO香港閣僚会議は、ドーハ開発アジェンダ(DDA)を進めるという目標において失敗しそうである。さらに、ドーハ開発アジェンダが4年目に入り、このアジェンダが約束する開発を実現していないことが明らかになっている。世界銀行による新しい予測では、以下の結論に達している。

 

・ドーハの貿易改革のシナリオでは、開発途上国の利益は一人当たり1日1ペニー以下にしか相当せず、飢餓と貧困の中に生活している人々の1%以下しか貧困基準以上に引き上げることができないであろう。

・少数しかない最大の開発途上国が、開発途上国の利益のほとんどを獲得するであろう。

・すべての利益の70%が、先進国に与えられるであろう。

 

これらの数字は、十分衝撃的である。しかし、世銀による予測は、環境の悪化や生活の破壊、ジェンダー関係への影響に関する貿易や輸出志向の実質的なコストを全く含んでいない。もし金銭面で開発の利益が少ないとしたら、社会・環境面でその利益はマイナスになる。

 

ドーハ・アジェンダは、援助するはずであった人々や政府から支持が得られなかった。主要開発途上国は2001年、DDAの開始を拒否した。ドーハ中期のカンクン閣僚会議は2003年9月に開催されたが、アフリカ諸国が実際に退席して崩壊した。たった数週間前、アフリカ諸国グループは、アフリカ諸国の関心事項のいかなる有意義な進捗につながる方向への進展もない、と述べた。南の意見に耳を傾けなければならない!

 

 

結果を出すべきとき

欧州議会緑の党会派・自由議員連盟(EFA)は、香港での交渉の遅延を歓迎する。それは、DDA交渉を継続する前に、貿易自由化によって持続可能な開発を促進するというドーハ・アジェンダの前提自体を徹底的に見直す機会になるからである。

 

・われわれは、提案された新しい貿易措置について持続不可能な短期の効果が予想されることに不安を感じる。消費者の購買力をいくらか増大するために、何百万もの労働者、農民、漁師の生活や雇用、南と北を即時に危険にさらすアジェンダを支持することはできない。知的所有権のために公衆衛生や生物多様性を危険にさらすアジェンダは、無謀な無視とみなされなければならない。

 何よりも優先しなければならないのは人間である。新しい貿易措置について決定する前に、労働基本権や社会・環境基準を厳格に遵守することを保証しなければならない。

 

・われわれは、提案された新しい貿易措置における長期的な持続可能性が考慮されてこなかったことに危機感を募らせている。平等な機会の名の下に、社会・環境基準における底辺への世界的な競争を加速させ、過剰生産・過剰消費の環境上の限界を全面否定するアジェンダは失敗する運命にある。市場アクセスを、製品の品質やその環境持続可能性、製造方法に従ったものにする必要性を否定するアジェンダは、環境ダンピングと考えなければならない。

 貿易ルールは、世界のインプットの必要性を増大せず、減少しなければばらない。これは、国内地域市場の強化および、国内地域市場の社会的・環境的な質を改善するためのものでなければならない。

 

・提案された新しい貿易ルールは、市民社会と政府、北と南、および、開発にとって何がよいのか、いつ市場開放すべきなのか、輸入品やサービスの社会的・環境的持続可能性の基準をどの基準にするのかについて自己決定する政策的余地を否定していることに対し、われわれは危機感を募らせている。

 貿易ルールは、各国が最も脆弱な国民層のニーズを尊重し、自国の経済・社会・環境開発目標を形成することができるようにしなければならない。

 

緑の党/EFAグループは、以上のような原則に基づいた香港における世界的な理解が、「開発」という特性に値するDDAの2006年度内の成功に導くであろうと確信している。貿易ルールの再構築を通して、このような持続可能な発展の原則に基づき世界的な理解がはじめて可能になる。

 

 

主要なDDA交渉のための明確な目標

 

農業分野

・われわれはWTO加盟国に対し、2008年までに農産物へのすべての輸出補助金および180日を超える支払い期間を伴う輸出信用、地域の生産物の商業上の強制退去を招く食料援助の提供を完全に段階的廃止するための拘束力のあるタイムテーブルを確立することに合意するよう求める。

・われわれはWTO加盟国に対し、農業貿易への量的アプローチを放棄し、代わりに条件付きの農産物の市場アクセスのための一連の基準について交渉するよう求める。こうした基準は、地域の食糧生産基準や食糧安全保障を尊重するものである。

・われわれはWTO加盟国に対し、農産物価格や食糧供給における底辺への競争を防ぐことのできる供給管理の枠組みを設計し、適用するよう求める。

 

非農産品市場アクセス(NAMA)

・われわれはWTO加盟国に対し、開発途上国が自国の工業化努力を守り、いつ、どのようにして自国の工業製品市場を開放するかについて自ら定める必要性を尊重するよう求める。

・われわれはWTO加盟国に対し、林水産物や採取産業セクターのような環境の影響を受けやすいセクターの持続可能性を保証する基準を確立しない限り、このようなセクターの市場開放交渉を進めないよう求める。

・われわれはWTO加盟国に対し、国家レベルの社会・環境法が国際協定・基準に適用する、もしくはそれらを越えることを尊重し、こうした措置を貿易に対する非関税障壁として異議申し立てを控えるよう求める。

 

サービス

・われわれはWTO加盟国に対し、各国政府が、いつ、どの程度自国のサービスを自由化するか、しないかについて自己決定する自由を認め、加盟国自身が望んでいる以上のサービス・セクターの開放を要求する、いかなる補助的アプローチもしくはベンチマーキング・アプローチをも控えるよう求める。

・われわれはWTO加盟国に対し、基本サービス(給水など)への永続的なアクセスという重要な開発における役割を承認するよう求める。このような基本サービスは、自由化対象項目から除外されなければならない。

 

特別優遇(SDT)

・われわれはWTO加盟国に対し、特別優遇措置を広範に利用することにより、開発のための国家政策の余地を広げるよう求める。政策的余地はまた、セーフガード条項の幅広い実施を通して、先進国において再編成されなければならない。

・われわれはWTO加盟国に対し、特別優遇措置を、農業・工業・サービスに関連した市場アクセスに関するあらゆる決定要件とみなすよう求める。

 

漁業補助金

・われわれはWTO加盟国に対し、水産資源の枯渇の主要原因の一つとなっている、先進国の漁業船団の容量超過につながる補助金の撤廃に合意するよう求める。開発途上国については、その補助金が漁獲量超過もしくは水産資源の過剰搾取につながらないならば、自国の船団に対し一定期間補助金を与えることが認められるべきである。

 

貿易と環境

・われわれはWTO加盟国に対し、持続可能な生産工程・生産方法(PPM)を促進するための提案を迅速に進め、すべての貿易に関する決定が多国間環境協定(MEAs)に含まれている貿易関連措置を完全に実施することを保証する適切な方法を確立するよう求める。

 

知的所有権(TRIPs

・われわれはWTO加盟国に対し、開発途上国のために知的所有権(TRIPs)のコストと利益を評価すること、および、開発途上国のコストを下げ、公衆衛生政策を可能にし、すべての生命体を特許から除外し、生物多様性条約(CBD)の完全な実施を確保するため、同協定を徹底的に見直すよう求める。

 

技術支援と「貿易のための援助」

われわれはWTO加盟国に対し、「貿易のための援助」措置が国家主導であり、社会もしくは環境に有害な経済政策の変更を実施するための、暗黙のまたは明示的条件がないことを保証するよう求める。援助措置は貿易交渉と切り離され、援助国の援助予算の追加資金によって調達されなければならない。

 

WTO紛争解決機関

・われわれはWTO加盟国に対し、独立した常設機関が国連専門機関からの専門家を含む選出された審査委員から構成され、そこでの訴訟手続きが一般の人々に公開され、すべての加盟国に対して紛争解決の訴訟を申し立てるための財政的・技術的支援を与えることを規定するよう、WTO紛争解決メカニズムを改革するよう求める。

 

緑の党/EFAグループの提案するこれらの措置は、特に、国際貿易関係において社会的・環境的懸念――現在のドーハ・アジェンダでは非貿易対象項目として無視されている――がさらに十分に考慮されるための道を開くため、持続可能な開発のためのアジェンダと呼ばれるに値するドーハ開発アジェンダが成功することを志向したものである。われわれは、香港に集まったすべてのWTO加盟国に対し、これらの提案を真剣に受け止めることを強く勧める。

 

良い取り決めは取り決めがないよりましである――しかし、悪い取り決めより、取り決めがない方がましだ!

 

 

 

 

ブリュッセル、2005年11月

 

欧州議会緑の党会派・自由議員連盟(EFA)

 

 

 

 

以上翻訳 野口 知美 (エコロ・ジャパン翻訳スタッフ)