第3回 EFGP(欧州緑の党連盟)大会 参加記 The 3rd Conference of European Federation of Green Parties |
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報告/文: 今本 秀爾(NPO エコロ・ジャパン代表)
2002年5月17日(金)〜19日(日)の3日間、ドイツ90年連合・緑の党の主宰で、ヨーロッパ29カ国から32のグリーンズ(緑の党)団体がドイツの首都ベルリンに集い、第3回目になるヨーロッパの緑の党大会が催された。ご存知のとおり、ヨーロッパはEU議会が設立されて以来、ヨーロッパ統一憲法の制定、政治・経済体制の確立など、さまざまな統合問題を抱えている。この包括的なレベルで、ヨーロッパの緑の党(グリーンズ)がどのような役割を担い、どのような政策を提示していくべきかを問うテーマで、今回の大会は実施された。
全体の統一テーマは「グローバリゼーションの緑化」。ヨーロッパ緑連合として、貧困やテロ、紛争や難民などが激化する世界の貧困地域の経済格差を助長する経済的グローバリゼーションをいかに食い止めるか、ヨーロッパ国内での食糧政策、再生可能なエネルギー推進政策、消費者保護、台頭する極右勢力対策、安全保障政策などについて、それぞれの講演者から提案がなされ、議論が行われた。
また昨年2001年4月にオーストラリアで、世界初の緑の党世界大会(グローバル・グリーンズ大会)が世界70カ国以上の緑の政治団体の参加によって催され、世界緑の憲章(グローバル・グリーンズ憲章)がまとめられたが、今回はその後の最初の緑の国際会議とあって、アジア、アフリカ、アメリカ、オセアニアなどヨーロッパ以外からも多くの参加者が集い、総勢54カ国から650名以上の参加者が参加登録する大会となった。また本会議の翌日には、ドイツ緑の党事務所において、グローバル・グリーンズ・ネットワーク結成の会合も行われた。
今回の目玉は、与党連立政権として閣僚を出しているドイツ緑の党から演壇に立った3閣僚をはじめ、ベルギーやフィンランドの環境大臣、そしておなじみ米緑の党代表で前大統領選に立ったラルフ・ネーダー氏の講演であった。大会2日目には多岐にわたるテーマでワークショップが行われ、また毎晩歓迎会やパーティーが行われ、緑の人々相互の親睦と交流が深められた。
会場ロビーにて集う人々
大会のポスター「私たちの世界〜グローバリゼーションの緑化」
大会1日目の様子から
大会に先立ち、16日午後からヨーロッパ・グリーンズ会議と並行して、数々の会議が別会場も含めて個々に行われた。緑の地方議員フォーラム(ワークショップ)、北海地方グリーンズ会議、島與部グリーンズ会議、移民問題ワークショップ、東西グリーンズ対話会議、ドイツ国会議員合同会議、そして欧州議会緑の自由会派連盟(EFA)の会議などが開催された。
開会スピーチ
大会に先立って、4名の講演者によるスピーチが行われた。
最初にヨーロッパ・グリーンズを代表して、ヨーロッパ緑の党連盟事務局長であるアーノルド・カッソーラ氏のスピーチがあった。
カッソーラ氏は、20年前から現在に至るまで、ヨーロッパのそれぞれの緑の政党が、いずれも選挙の勝利と不幸をともに経験してきたことを述べ、その中で今や緑の政党がヨーロッパ議会第4の勢力にまで発展したこと、ベルギー、デンマーク、キプロス、スイスで緑の政党が議席を伸ばしたこと、ディーター・サロモン氏が一週間ほど前にドイツの大都市で市長に選出されたことを紹介し、ドイツやベルギーにおいて原発の段階的廃止政策を実現させた功績を強調するとともに、他のヨーロッパ諸国もそれぞれ追従すべきこと、さらにヨーロッパ・グリーンズは統一したアジェンダをまとめるという課題に直面していることについて触れた。
またカッソーラ氏は、今後のヨーロッパ共通の課題としては、現在ヨーロッパ中に広まる極右勢力の台頭という問題、さらにパレスチナ・中東紛争解決、さらに京都議定書批准といった問題があることを指摘するとともに、ブッシュ米大統領による京都議定書批准拒否は、あらゆる他国への侵略行為にも等しいものがあると非難した。氏によれば、緑の党は世界中の人々の生活の質を向上させるための運動である。氏は、今後ヨーロッパ緑の党連盟の抱える課題として、@ヨハネスブルグ・サミットに向けての具体的な提言、A2004年のヨーロッパ議会選挙の準備、Bヨーロッパレベルでの緑の勢力の連携と効率的な共同組織体制の確立、C中近東和平への貢献・イスラエルーパレスチナ紛争の解決策の模索、を提示した。
続いて行われたのは、ドイツ緑の党・同盟90共同代表のクラウディア・ロート女史による白熱したオープニング・スピーチである。上下ジーンズ姿とブロンド髪で颯爽と登場する彼女の姿は、ひときわ緑の政治家の象徴として喝采を浴びていた。彼女はグローバリゼーション一般の問題に触れ、われわれは世界中の貧困化を招く市場経済のグローバリゼーションを進めるのではなく、かといって今日ヨーロッパ、最近ではオランダ、フランス、イタリア、ポルトガル、オーストリアなどで台頭している極右勢力のようなナショナリズムに走ることもなく、環境、人権、社会正義のグローバリゼーションを世界に構築していかねばならないこと。またグローバルな社会的公正とは、世代間を超えた、将来世代にも及ぶすべての人々が担うべき責任であることを力説した。
続いて演壇に登場したのは、2001年オーストラリア・キャンベラで第1回緑の党世界大会(グローバル・グリーンズ世界大会)の主催元となり、大会を成功させたオーストラリア緑の党の渉外幹事であるマーガレット・ブレイカーズ女史である。彼女はこの場を借りて、昨年のグローバル・グリーンズ大会の模様やグローバル・グリーンズ憲章の完成に至った話を披露した。今や緑の政党は世界70カ国以上に及び、世界最大の政治勢力の一つとなっている。最近でもスリランカ、ドミニカ共和国、パプア・ニューギニア、そして1週間前に韓国に緑の党が生まれた。ブッシュは対テロの世界同盟を目指しているが、われわれは社会正義のための世界同盟をめざしているのだ、と彼女は将来の緑の政治の世界的発展を強調して締めくくった。
最後にメキシコ緑の党の幹部で北米緑の党連合委員のホルヘ・ゴンザレス氏がスピーチした。氏の話によれば、最近メキシコの大都市カンコン市に緑の党の市長が誕生したという(拍手喝采)。氏はリオ+10におけるグリーンズの政治的成果を期待するとともに、Eメールなどでのネットワーキングにる世界中の緑の政治勢力の結集の必要性を呼びかけた。
全員のスピーチが終了したあと、それぞれの講演者に対する質疑応答が簡単に行われた。 (以下の写真はそのときの模様)
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ロート共同代表(ドイツ緑の党・同盟90)の演説 マーガレット氏(オーストラリア緑の党)の演説
特別講演の後、本会討論としてまず、ソーラー(太陽熱・太陽光エネルギー)をはじめとした再生可能なエネルギーの導入政策の実現に関するテーマで、各国の環境大臣クラスによる講演が行われた。
基調講演 「持続可能なヨーロッパのために」
オープニング・スピーチの後、欧州委員会の緑の党メンバーであるミハエル・シュライヤー氏が演壇に立った。同氏はヨーロッパレベルでの数々の政治的問題、たとえば社会保障政策、移民政策、労働雇用政策、デンマークやベルギーで行われているような再生可能なエネルギー政策、さらに安全保障政策において、ヨーロッパ間で協定が結ばれ、協同行動がなされる必要性があることを主張した。とりわけ安全保障政策においては、各国において多額の予算を占めている軍事費を削り、軍縮を達成させるため、外相や財務相に働きかけることが必要である。EUが行うべき緑の協同政策とは、環境、社会正義、人権、民主主義、反原子力という立場において共通した政策である。
共通討論1 「ソーラー・ヨーロッパに向けて」
まず演壇に立ったのは、現在フィンランドの環境大臣を務めるサトゥ・ハッシ女史(フィンランド緑の党)である。彼女はIPCC会議の重要性とともに、地球温暖化解決の唯一の解決策は、再生可能なエネルギーの早期導入しかないことを強調し、それは単に経済や開発の代替案というのみならず、世代間正義や貧困格差の是正にもつながる、グローバルな社会正義を実現するたえの基本条件でもあると述べた。気候変動は途上国の発展を妨げることにも通じるため、先進諸国は有害な排出ガスを削減し、途上国においてもテクノロジーの導入による、再生可能なエネルギー利用を進めるべきである。1993年にフィンランド政府は原子力エネルギー廃止で合意をみたが、それは86年のチェルノブイリ原発事故の7年後であり、市民の原発に対する危機感が増していた時期であったからだとも考えられる。
続いて講演したのは、ドイツの現環境大臣である、緑の党・同盟90のユルゲン・トリッティン氏である。
氏は、未だ国に発電所がなく、電力なしに生活している市民が世界中に20億いること、それらの国々にテクノロジーの供出が必要であること、途上国に再生可能なエネルギーの利用を説得するためには、先進諸国がまずそのエネルギー転換を達成すべきことを強調した。第1のエネルギー政策は原子力廃止であり、第2にエネルギー節減と効率化である。
ドイツでは2001年の第4回目の新プラント建設計画の導入で、太陽光プラントの建設推進を進めている。3年半かけてドイツでは風力発電施設の導入により、新たに3万5千人の雇用創出に成功した。温暖化問題に対しては、2020年までに18%の温室効果ガス削減を目標とすべき。また総じて30%の原子力発電削減により、エネルギー予算を半額(800万ユーロ→400万ユーロ)にすることが可能。地球上の原発の1/4はアメリカにある。同時にアメリカは温室効果ガス削減に際して、EUの2倍の負担が必要。現在は環境税にしても、原発その他には無課税であり、税のかけ方に不公平がある。氏の講演内容はこのようなものであった。
次に、エネルギー政策が専門の、欧州議会議員のクロード・トゥルメ氏が講演した。氏の話はつぎのとおり。EUにはEURATOMといわれる、かつてからのエネルギー協定が存在するが、原発エネルギー推進政策が盛り込まれているため、この協定の改正が必要とされてきた。そして昨日ドイツ国会下院において、このユーロ協定の原発条項に制限条項を設けることで採決が可決された。今後もヨーロッパレベルでこうした政策が発展すべきである。また気候変動対策や地球サミットなどにおける国際的合意を簡明にするため、ITツールの活用促進が不可欠である。
最後に壇上に上がったのは、ベルギーの現環境大臣のオリビエ・ドゥルーズ氏(ベルギー緑の党・エコロ在籍)。氏はフランスの原子力依存率が70%あること、中国やインドなど途上国家で人口過密地域でのエネルギー対策が不可欠であること、さらにエネルギー利用は独占ではなく、一定制限付きの自由市場競争により行われるべきであり、そのことによってより消費者本位で安全性の高い、再生可能なエネルギー市場が開拓されうると述べた。さらに氏は、企業もエネルギー節減に取り組んでいるものの、査察不可能なグレー・ゾーンがあり、この不透明な部分のチェック体制が必要であるとも指摘した。
歓迎パーティー
初日の晩は、ドイツの外相ヨシュカ・フィッシャーの招待にて、ベルリン市内中心部にあるドリント・ホテルのクラブバーとディスコを貸し切って行われた。あまり広くない店内に溢れんばかりの緑の会議の参加者たちが集い、遅くまで歓談やディスコで盛り上がった。
ホテルのクラブバーで深夜まで談笑する緑の党のメンバーたち
大会第2日目の様子から
ラルフ・ネーダー氏の基調講演 「消費者保護 ― アメリカの視点から ―」
熱弁するラルフ・ネーダー氏
第2日目は午前9時から、米緑の党推薦の前大統領候補で消費者保護運動家として著名なラルフ・ネーダー氏が講演した。氏はいく分疲れた表情ではあったが、淡々と、しかし半ばゆっくりと語るそのスピーチには説得力があり、後で多くの聴衆のスタンディング・オベーションでの拍手喝采を浴びつづけた。
後で聞いた話によると、氏は世界中で講演にひっぱりだこで、2年先までの講演スケジュールが詰まっており、その後も殺到する依頼の一部しか引き受けないという。今回のヨーロッパグリーンズでの会議はその意味で、めったにお目にかかれない氏の貴重な講演機会であった。氏の講演テーマは食品流通に関する消費者保護の必要性を中心とする、今日の政治的課題であった。
氏の講演の概要はおおよそ以下のとおり。
・西側の民主主義諸国では、消費者個人も気づかない大企業と市民社会との不平等な闘争が存在している
・60〜70年代、アメリカにおいて消費者保護運動が広まった。
・10年前にアメリカでは景気上昇とともにGDPが上昇し、労働者の労働環境が向上したが、同時に公共サービスの低下を招いた。
・大企業は巨大なコマーシャル活動を駆使してセールス活動を行い、政府の産業保護の下で、巨大な利益をあげようとする。だがこれは市民中心型社会(civil society)または民主主義の本質と矛盾している。
・大企業は消費者の意向を無視し、独占的政治力を振るいつづけている。これは自由取引(free trade)などとは程遠い現状である。たとえばマクドナルドなどの大資本や砂糖産業は、栄養過多の商品を子供などの若年層に提供し、彼らを肥満化させ、健康に悪影響を及ぼさせている。
・食糧、食品の安全性の問題は、農業や健康、医療問題などすべての問題に直接連関している。
・こうした大企業の非倫理性、「静かなる暴力」をわれわれは審判していかねばならない。
・結局のところ、経済成長は福祉の充実、雇用拡大、生活の質の向上とは切り離されてきた。
・国民の将来を決めているのは、産業である。
・WTOやNAFTAといった機関は、貧困国の住民の人権を抑圧している。
・テクノロジーは、遺伝子組み替えなどに応用されるよりも、太陽光エネルギーなどの再生可能で安全な技術に応用されるべきである。
・物質的豊かさの指標である自己満足(self-sufficiency)という幻想にわれわれは陥っている。
・温室効果ガスの排出を制限することは、同時に企業のコストダウンにもつながり、好結果をもたらす。
・米政府は税金を投じて70億ドルもの予算を武器調達(軍事費)につぎ込もうとしている。
・こうした問題に満ちた状況の中で、われわれは将来社会に対するグランド・デザインを描く必要がある。
・すべての政治家や候補者が、緑の政策を推し進めるべき時期に来ている。
・われわれは抵抗しないかぎり、すべてはそのまま進んでゆく。
・そして将来世代に対してわれわれは何を残すことができるか、何を残すべきか、という課題に取り組むことが重要。
そのためには、われわれが今、日常生活のレベルからできる政治参加・デモクラシーを実現させていかねばならない。
・若い世代で政治的無関心な者に対しては、「政治に関わる気がなければ、やがて政治からおつりが返ってくるぞ」と言えばよい。
共通討論2 「新しい農業―文化」
ラルフ・ネーダー氏の講演に続き、緑の農業政策に関する講演や会場の聴衆との質疑応答が、ネーダー氏も交えて行われた。まず演壇に上がったのは、欧州議会議員で欧州農業委員会委員のF.W.グエーフェ・ツー・バリングドルフ氏である。彼はBSE対策など、EUの消費者保護法を農家や企業中心ではなく、消費者中心の立場で法案化すべきことを説くと同時に、それぞれの地域が単一商品で質のよい安価なものを互いに提供しあうことにより、自由競争ではなく公正な取引(fair trade)を実現させるべきだと述べた。
続いては一見「ツッパリ姉ちゃん」のような風貌でおなじみの、ドイツ緑の党の前共同代表・環境大臣で、現在ドイツの農業大臣を務める、レナーテ・キュナスト女史の番である。(直前に講演したバリングドルフ氏が、キュナスト大臣の行った農業政策をやたら引用して、ベタほめしていたことを注記したい)
キュナスト大臣は、ドイツ緑の党が農業政策に真剣に取り組み、ヨーロッパ議会にも重要な刺激を与えたことを強調。さらに何よりも風力発電推進政策で新たに3万5千人の雇用創出を生み出したドイツ赤ー緑の連立政権による環境政策の成功を強調し、環境対策でかつ雇用拡大を図るという政策の「パラダイム転換」が必要であることをまず強調した。現段階ではバッテリー税も検討中だという。今後は新しいエネルギーを利用した農業も可能であり、消費者も透明性があり、品質のよい、環境に配慮した農産物商品を購入する努力をするなど、農業政策は多面的観点から取り組まれねばならない。
身近なところでも、栄養過多の食事が蔓延しており、子供に対して将来どういう悪影響が生じるかわからない。
たとえばドイツの子供の40%は人工乳飲料などによって肥満化している。ここでドイツ赤ー緑連立政権は、食品に含まれるカロリー率の算出などを専門家・学者の協力により推進させている。スローガンとして「Genuss ohne Reue」(後悔なき満足)を達成することが望ましい。農産物の大量消費は世界規模で地域の政治状況に多大な影響を与える。たとえばドイツで肉を大量消費すれば、ドイツが肉牛の飼料の50%を依存している大豆を間接的に南米から大量輸入することになり、その結果、南米地域の森林破壊や貧困層の飢餓を加速させることになるのである。
最近、緑の党はドイツ連邦議会で新たなEUの消費者保護法案を提案した。それには、(1)EUレベルで新たな消費者保護のための共通機関を設立する。この機関を通じて、たとえばバナナなど食糧の余剰分を貧困国家や貧困層に回すようにさせる。(2)消費者への適正な商品情報を提供することを保証する規約を設ける。という2つの条件が加味されている。
最後に、欠席したベルギーの保健大臣に取って代わり、ベルギー緑の党からイザベル・フェアトリースト女史が演壇に上がった。同女史はWTOのダンピング問題などに触れ、貧困国家への商品輸出をストップさせ、企業のコンプライアンスを上げる必要性を力説した。
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ネーダー氏の講演に拍手を送る聴衆たち 熱弁をふるうキュナスト独・農相
ワークショップ
大会2日目の午後は、メイン会場であるベルリン芸術大学のコンサートホールから、近くのベルリン工科大学のゼミルームに変更して、テーマごとの分科会(ワークショップ)行われ、それぞれ約3時間の間、活発な意見交換や提言がなされた。分科会のテーマはつぎのとおり。
・地方議員フォーラム(16日初日のつづき)
・ヨーロッパ緑の党
・2004年のヨーロッパ議会選挙に向けての戦略
・エスペラント
・ジェンダー
・ヨーロッパ・グリーンズ・プレス・メディア部会
・山岳国際年
・経済摩擦解消
・地域開発と農業政策
・教育政策
・EU拡大問題
・住民投票と直接民主主義
・グローバリゼーションとヨハネスブルグ・サミット
・アマゾンと熱帯雨林
・EUの持続可能性戦略モニタリング
・青少年政策
・選挙制度
・ナショナリズム
・エネルギー政策
・「世界は一つ」構想
共通討議3 「拡大されたヨーロッパにおける緑の勢力」
最後の共通討議では、英国緑の党からの代表者、ベルギーの運輸大臣、および緑の党ヨーロッパ連盟の共同代表、そしてドイツの外相の4名の講演と会場からの質疑応答が行われた。
最初に英国緑の党の代表者から、ヨーロッパ統一憲法の制定を進めるべき課題が提示された。それを受けて、ベルギーの運輸大臣であるイザベル・デュラン氏から、ベルギー緑の党の選挙結果とこれまでの過程が報告され、各国のナショナリズム台頭とEUレベルでの連帯との問題について触れられた。
EFA(ヨーロッパ緑の党連盟)の共同代表であり、ヨーロッパ議会議員のダニエル・コーン=ベンディット氏が次に演題に立ち、非常に熱のこもり興奮した口調で、反ユダヤ主義と極右ポピュリズム、そして米ブッシュ政権も含めたナショナリズム政策を立て続けに非難し、対決する姿勢を強調した。
最後に登場したおなじみヨシュカ・フィッシャー現ドイツ外相は、さらにエキサイトした口調で平和のためのEUの総合安全保障体制のあり方について言及した。フィッシャーによれば、平和のプロセスはEUだけでは成り立たず、左翼政党の言うような絶対平和主義や非暴力・反戦主義の理念を貫くだけでは非現実的である。それは現実的に機能させねばならず、そのためにはアメリカとの連携は必要不可欠である。したがってわれわれはアメリカ・ブッシュ政権をいたずらに非難するのではなく、むしろアメリカと積極的に連携して、それぞれの国や地域で「第三の道」である平和路線を探る努力を促す以外にない。EU内においても同様であり、EUではどの一国が主導権を握ってもいけない。われわれには一つの文法があるわけではない。あらゆる価値観の多様性を認める政治、それらのバランスが取れた政治が実践されねばならない。だから極右勢力も、ナショナリズムも、反ユダヤ主義も、すべて頭ごなしに非難するのではなく、それぞれの主義主張の多様性を認める姿勢が必要だ。拡大されたヨーロッパでは国民国家のいずれも役割を果たさないし、機能しないだろう。だから緑の勢力は、旧左翼のような国民国家への執着を捨て、現在の極右勢力に、今や国民国家がもはや存在できないことを示さねばならない。対外的においても、EUは排除志向で臨むのではなく、プラス志向でどこに対しても連帯の姿勢を持つことが重要だ。私自身は個人的には対テロ平和政策についてはブッシュ大統領とは意見を異にするが、だからといってアメリカに対して協力を拒み、EU独自の路線を前面に押し出して対決しようとすれば、逆にヨーロッパのナショナリズムを相手に押し付けていることになってしまう。
フィッシャー外相はこう述べて、アメリカ・ブッシュ政権とEUとの「連帯」を強調したため、拍手とともに、会場の一部からはブーイングや野次、罵声が飛び交う始末となった。また演説中に会場のあちこちから「それでもブッシュ政権の政策にはグリーンは徹底的にNOの姿勢を貫くべきだ」といった言葉が投げかけられ、それに対してフィッシャー外相が興奮してやり返す一幕も見られた。
最後に同外相は、イスラエル・パレスチナ紛争にも触れ、われわれはどちらの側にも連帯しない。和平のプロセスへの連帯があるだけだ、と主張した。
この緑の党のヨーロッパ会議が終了して数日後、米ブッシュ大統領がベルリン入りし、ドイツ国内で大規模な反戦・反ブッシュ・デモが行われた。そしてデモには一部の緑の党員も参加していたという。(フィッシャーはこのデモを非難したのに対し、緑の党スポークスパーソンのクラウディア・ロート女史はデモを擁護した) ドイツの左翼野党であるPDSや社会主義政党などは、明らかに反戦・反米・反ブッシュの姿勢を明らかにしているが、政権与党であるドイツ緑の党・同盟90は党内でアメリカの対アフガン攻撃に対する立場が真っ二つに割れ、大揉めに揉めてきた。9月22日の総選挙の準備に直面して、一応党内では紛糾の収拾はついたものの、最近のブッシュ米大統領のドイツ議会での演説に先立って一部の緑の党員が拒否して議場を退席したり、ブッシュ大統領宛てに反戦の要望書を送るなど、まだ平和政策については党内で意見が完全に二分したままとなっている。
ここでのフィッシャー外相の主張は、政権担当与党として、アメリカの対テロ政策に協力し、親米的な協力姿勢を見せる、緑の一派の統一見解を代弁しているものといえる。
フィッシャー外相の講演が終わると、すでに予定終了時刻を大幅に超過してしまっていたため、ゲストとして招聘を受けた、イタリアの貿易組合事務局長のゲスト・スピーチは短時間で終わり、その後の討論の時間は大幅に短縮された。そしてこの日の会議終了後、参加者は最近リニューアルされたドイツ連邦議会議事堂(Bundestag)を見学し、その後にドイツ緑の党本部に招かれ、盛大なレセプションが催された。この日の晩も大勢の海外からの参加者でにぎわった。
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熱弁をふるうフィッシャー独外相(緑の党)
大会第3日目の様子から
総会(ワークショップ報告と決議)
最終日、19日の午前中は、前日18日午後に行われたワークショップの報告がそれぞれの参加者代表からまず行われた。その後、ヨーロッパ各国の緑の政党により提出された議案がそれぞれ採決される決議へと移った。決議の採決方法は、それぞれの緑の党が持つ議席配分に応じて各自の持ち票数が決められ、賛成の場合にはグリーンの短冊を、反対の場合には赤い短冊を、棄権の場合には白の短冊をそれぞれ会場で示し、短冊の数を数えて、過半数に達していれば採択するという方式がとられていた。(グローバル・グリーンズ2001・オーストラリア大会の決議の際と同様の方法)
今回提出された議案は計37件あったが、採択されたもの、不採択のものは以下のとおり。<採択された議案>
1.イスラエルーパレスチナ紛争に関する決議 (イングランド&ウェールズ緑の党 提案)
2.キプロス領内の米軍アンテナ撤去を要請する決議 (キプロス緑の党 提案)
3.イラクおよび大量破壊兵器に関する決議 (イングランド&ウェールズ緑の党 提案)
4.持続可能な交通手段の促進に関する決議 (ベルギー緑の党・エコロ 提案)
5.バイオエネルギー利用に関する決議 (ドイツ緑の党&90年連合 提案)
6.紛争解決に関するEUの役割についての決議 (ベルギー緑の党・アガレフ 提案)
7.消費者保護に関する決議 (ドイツ緑の党&90年連合 提案)
8.絶滅寸前の言語保護に関する決議 (アイルランド緑の党 提案)
9.温室効果ガス削減に関する決議 (ドイツ緑の党&90年連合 提案)
10.ヨーロッパ緑の党連盟の強化に関する決議 (ドイツ緑の党&90年連合 提案)
11.国際外交および安全保障政策に関する決議 (オーストリア緑の党 提案)
12.ジェンダー政策強化に関する決議 (オーストリア、スイス、オランダ緑の党 提案)
13.EUにおける持続可能なエネルギー政策を促す決議 (ドイツ緑の党&90年連合 提案)
14.税制改革(税制の緑化)に関する決議 (ドイツ緑の党&90年連合 提案)
15.ジェンダーにおける男性の役割についての決議 (スウェーデン緑の党 提案)
16.マルタにおける選挙法改正案廃案を要請する決議 (マルタ・オールタナティブ民主党 提案)
17.地中海自由貿易地域に抗議する決議 (スペイン緑の党 提案)
18.グルジアにおける緑の政党に対する政治的圧力に抗議する決議 (グルジア緑の党 提案)
19.再生利用可能なエネルギー電力導入に関する決議 (ドイツ緑の党&90年連合 提案)
20.スペイン政府による水資源開発計画に反対する決議 (スペイン緑の党 提案)
21.有機栽培農業への転換を推進させる決議 (スコットランド緑の党 提案)
22.キプロス領内における軍縮と他国軍の撤退を促す決議 (キプロス緑の党 提案)
23.イギリスの原子力エネルギー開発政策に抗議する決議 (スコットランド緑の党 提案)
24.西サハラ(アフリカ)の独立に関する国民投票実施を促す決議 (フィンランド緑の連盟 提案)<否決された議案>
1.中東問題に関する決議 (オランダ、ベルギー緑の党 提案)
2.中東和平に関する決議 (フランス緑の党 提案)
3.「対テロ戦争反対」を要請する決議 (イングランド&ウェールズ緑の党 提案)
4.ヨハネスブルグでの地球サミットに関する決議 (ヨーロッパ緑の党委員会 提案)
5.経済グローバリゼーションに関する決議 (ヨーロッパ緑の党委員会 提案)
6.観光客に対する環境税課税に関する決議 (スペイン緑の党 提案)
7.EURATOM条約改正に関する決議 (ドイツ緑の党&90年連合 提案)
8.同上 (オーストリア緑の党 提案)
9.持続可能なエネルギー資源憲章立案に関する決議 (ドイツ緑の党&90年連合 提案)
10.セラフィールド原発廃止に関する決議 (アイルランド緑の党 提案)
11.EFGP(ヨーロッパ緑の党連合)強化に関する決議 (ドイツ緑の党&90年連合 提案)
12.西サハラに関する決議 (スペイン緑の党 提案)
13.EUにおける少数民族の言語権をめぐる決議 (緑のエスペラント同盟 提案)
※ 否決の理由としては、他の決議案と内容が重複していること、議論を要するものであること、など。
閉会宣言
「対テロ戦争反対」議案など、賛成・反対票が完全に真っ二つに分かれたケースもあり、採決が微妙な決議案もあったことを明記しておきたい。
決議に賛成を示す場合は緑票を
反対は赤票を掲示する
閉会にあたって、EFGP(ヨーロッパ緑の党連合)のスポークスパーソンであるマリアン・クワン女史と、今回の大会を主催したドイツ緑の党&90年連合の共同代表であるラインハルト・ビュティコファー氏により、閉会の挨拶が行われた。ラインハルト氏は、今後将来ヨーロッパ、そして世界各国の各自が緑の政治を進めていくうえで、われわれが希望的観測、オプティミズムを持つことの重要性を強調していたのが印象的であった。「グリーンは、グローバルな正義を表す新しい色である」
あと、忘れてはならないのが、コロンビア緑の党の大統領選候補者で、昨年2001年のグローバル・グリーンズ世界大会でもスピーチした、イングリッド・ベタンクール女史のその後の安否である。彼女は過日選挙遊説中にコロンビア革命軍FARCに捕らえられ、未だ行方不明となっている。パレスチナ問題と並び、ベタンコート女史の解放に当たって、世界中のグリーンズが協同してアクションを実践するよう、何名もの講演者から言及がなされていたことも付け加えておく。
グローバル・グリーンズ会議
EFGP第3回大会が終了した翌日20日(月曜日)の朝から、ドイツ緑の党・90年連合の事務所で、2001年オーストラリアで結成されたグローバル・グリーンズ連盟の幹事が集まり、幹事会が持たれた。
ここでは、同連盟(Global Greens Federation)とは別に、任意のメンバー参加と緩やかな世界の緑の人々の連帯を図るため、新たに「グローバル・グリーンズ連絡会議およびネットワーク」(Global Greens Coordination and Network)の設立が提案された。同団体設立の目的は、全世界の緑の政治団体が協同行動できるよう、それぞれの連携やコミュニケーションを密にするということであり、さし当たってはEメール等で連絡を取り合うこととされた。
また連絡会議(GGC)およびネットワーク組織(GGN)は、アジア太平洋、アフリカ、ヨーロッパ、北米、南米それぞれに結成された連盟からそれぞれ代表を2〜3人ずつ出して結成されること、またこのネットワークおよび連絡会は、連盟のように決議や採決権をもたず、あくまで憲章改正のサポートしたり提案を受けつける組織であること、2001年に結ばれたグローバル・グリーンズ憲章のアジェンダの実践を推し進めること、などが提案された。(未だ懸案の段階。各自持ち帰って検討するということになった。)
また目下世界のグリーンズが共通・連携して解決すべき問題として、コロンビアのイングリッド・ベタンクール女史の解放(コロンビア緑の党の担当者と密に連絡をとり、臨機応変に情報入手を図ること)、パレスチナやカシミール紛争問題、選挙戦術、などが提案された。
午後からは新たに参加者が事務所に集まり、8月のヨハネスブルグの地球サミットに向けて、グローバル・グリーンズがどのようなアクションを実践すべきか、というテーマについて話し合われた。
ヤング・グリーンズと女性参加
このヨーロッパ・グリーンズ大会の前々日から、ヨーロッパ・ヤング・グリーンズの大会が同じベルリンで開催された(5月16日〜19日)。16日夜遅くからは、20代のドイツ緑の国会議員や緑の党代表(スポークスパーソン)らが主宰する、ヨーロッパのレベルでのヤング・グリーンズたちのネットワーキング・イベントが開催された。大会開催中も、ヤング・グリーンズたちは、大会の裏方や事務に終始大活躍していた。
日本の政治絵図と決定的に異なるのは、グリーンズの集まりのつねに和やかで自由な雰囲気である。日本の既成政党の党大会のようなおごめかしさは微塵も感じられず、まるで若手NGOのイベントのような、普段着で肩のこらない、カラフルな服装と気さくな気分の党大会や集会、これは世界中のグリーンズが共通に兼ね備えている特長といえる。そして会議の司会、議事進行、スピーチ、討論、裏方スタッフ、何をとっても女性がリード役を取っていることである。とりわけヤング・グリーンズ(緑の党青年部)は、他の政党とは違い、参加者の半数以上が若い女性であることも、グリーンズの特長である。身近な日常生活に根ざした問題 ――――― 食糧、福祉、平和、環境保護、まちづくり、ジェンダー、雇用問題、医療、子育てなど、女性により身近で関心の深いテーマが緑の政党の中心的政策として掲げられているからである。
今回のヨーロッパ会議でも、決議の採決、講演、議員による運営委員会など、すべて女性がてきぱきと議事進行役をこなし、それぞれのミーティングやワークショップにおいても男性参加者以上に積極的に意見や主張を披瀝している場面が終始目立っていた。男女が対等に、それぞれ何の気構えも遠慮もなく、自由活発に討論をし合える場が自然とできているのが、グリーンズの会合である。またそこでは国会議員だからとか、素人参加だからとかいう上下の差別や権威性は、(議決権の有無という条件を除けば)基本的にまったく存在しない。日本やアジア諸国におけるグリーン勢力の政治的課題も、若者や女性をいかに政治に惹きつけることができるか、そして次世代にいかに緑の希望を託すことができるか、という点に集約されるように思われた。
会場前に集まるヤング・グリーンズたち
雑感
グリーンズ(緑の政党)の国際会議に筆者が参加するのは、昨年のオーストラリアに次いで2回目である。
グリーンズの人々の打ち解けたフレンドリーな雰囲気、適度に緊張感はあるが概して肩のこらない会合は、日本であればNGOと政治集会(あるいは学会)とのちょうど中間をいくような、実に居心地のよい場所である。
ただ緩やかで和やかな連携というだけに、弱点もそれなりに露呈している。たとえば決議での採決の仕方、討論の進め方などが今ひとつ漠然としており、合理的で集中的な討論がどうしても散漫になりがちで放言に終わってしまうというパターンが、総会・ワークショップを通じて数多く散見されたことである。
日本のNGOや政治集会にもよくみられることであるが、ここではまず組織論の専門家、議事のプランナーと経営コンサルタント役が存在しないことが問題点として挙げられる。そして国際ネットワークの発展を成功させるためには、IT技術担当のエンジニアの存在も必要だ。そしてできればどのような運動戦略が好ましいか、独創的な意見を述べられるアイデアマンもほしいところだ。あとは、緑の政治に関心をもつ「外部」の人たちもしくはマスコミに、どうやって緑の運動の意義を的確に伝授していけるかである。この点も、営業マン、マーケティング戦略の専門家が必要である。
次回は2006年までにアフリカにおいて、グローバル・グリーンズ第2回大会が開催される。今夏の地球サミットも含め、このときまでに、世界のグリーンズが協同で何を達成できるか、その真価が今問われているところである。
(以上 文責・報告 今本 秀爾)