【参考】ドイツ「赤−緑」政権7年間(1998―2005年)の主要な政策実績

 

 

●「移民法(外国人法)改正」(1999年制定)

 

 【概要】

1)2000年よりドイツ国内永住外国人の子どもは、二重国籍となり、18歳〜23歳の間に国籍選択義務を課す。(野党の提案により追加された条項)

2)帰化申請に必要な居住要件を15年から8年に短縮。
3)二重国籍の取得条件の大幅緩和: 相手国の法律に国籍放棄の規定がない場合、相手国が国籍放棄を

通常拒絶している場合、相手国が不合理な理由により国籍放棄を拒絶したり、不当な条件を付した

場合(すなわち、国籍放棄の手数料が平均月収より多く、2500マルクを超える場合および出身国での兵役の履行を条件とする場合)、高齢者で国籍離脱が困難であり、帰化の拒絶が過酷な場合、国籍放棄が当人にとって経済上または財産上の相当な不利益となる場合、難民等の場合に、二重国籍が容認される。

4)EU市民が帰化する場合は、相互主義により、相手国が二重国籍を認めていれば、二重国籍を容認する。

 

【成果】

ドイツにおける帰化者の3分の2は、二重国籍が容認されることになった。改正以前のドイツにおける二重国籍者は220万人(人口の2,7%)であり、その内訳は、民族的帰還者の場合が130-140万人、国際結婚による子どもの場合が70万人、移民の2世などで例外的に認められた者が23万人となっていた(推計)。

 

【参考】

ドイツには現在、およそ750万人の外国人が暮らしている。これは総人口の約9パーセントにあたる。内訳はトルコ人(約230万人)、旧ユーゴスラビア出身者(約120万人)、イタリア人(約60万人)、ギリシア人(約36万人)など。このうち帰化申請可能な8年以上ドイツに住んでいる外国人は約410万人。毎年10万人程度の外国籍の子どもたちが生まれる。多くの外国人労働力はドイツ経済における重要な役割を担っている。

 

 

● 同性愛者婚姻法(2001年施行)

 

  【概要】

1)同性愛カップルが居住する自治体の戸籍役場で夫婦登録することを認める。

2)配偶者手当てや扶養義務、健康保険や医療介護保険、財産相続権、賃貸契約など幅広く

男女の夫婦と同様の扱いを受ける。

    3)条件付き養子制度、配偶者控除(オランダでは実施)は野党(CDU/CSU)の反対により

条文から削除された。

 

 

● 消費者保護政策の抜本的改善 (2001年以降)

 

  BSE問題(2000年)⇒ 連邦消費者保護・食糧・農業省の設置(2001年)

                        ↓

  食の安全、化粧品、日用雑貨、煙草製品、獣医学関連製品の管理が任される

 

 ★消費者保護・アクションプランの実施

1)       消費者の健康と安全の保証、2)消費者の経済的利益の保証、3)消費者に対する情報提供や

教育の充実、4)消費者の利益の強化。

 

 ★「持続的消費」の概念: 生産者、消費者、農家、環境のすべてに対して「持続的」である消費活動

 

   【成果】

   1)製造者責任の徹底=エコラベルの義務づけ、フェアトレード製品の開発奨励

   3)遺伝子組み替え作物法(2005年施行)=遺伝子組み替え食品の情報明示義務付けなど

   4)食品・飼料法改正(2005年施行)=食の安全と情報公開の強化

  

 

 

● 有機農業促進政策(2001年−)

 

  ⇒ 有機栽培(オーガニック)農業・畜産の促進強化、化学肥料規制の強化

 

  【概要】  

  1)ドイツの受給するEU農業補助金は今後、大半が有機農業分野に配分される

2)新農業政策=有機農業の転換に対する奨励金の引き上げ、有機農産物および地域特産の農産物の

加工および販売流通に対する支援の強化、家畜福祉に配慮し、粗放型畜産への手厚い投資支援が

受けられる仕組み作り。

  3)環境保全型農業の促進、農業の多面的機能の重視。

4)マルチ機能農業の提唱: 伝統的な農業専業に加え、例えば観光や再生可能原料の生産、バイオガスを使うエネルギー生産などによって副収入の道を開くコンセプト。  

 

  【成果】

   2000 年について見ると、ドイツには1万 2,740 の有機農家があり、総面積54 万 6,000 ヘクタールの農地で有機農業行われていた=前年 99 年比では、農家数は 22 パーセント、作付面積は 20 パーセント増加した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

● 原子力法改正(2002年)

 

1)原発の耐用年数を運転開始から32年と定め、各原発の稼動年数を算出、それ以降は操業停止。

2)残存耐用年数までの原発の安全基準の遵守。

3)廃棄物、使用済み核燃料の中間管理施設の設置の義務付け。

4)使用済み核燃料再処理は2005年7月で停止。

5)その他

 

【成果】

   高速増殖炉の廃止、新規原発の建設・操業停止、3E(エネルギー効率化、省エネ、再生可能エネルギー=風力・太陽光・バイオマス・水力)の促進。

 

【参考】90年連合・ドイツ緑の党と社会民主党との政策協定(1998年連立政権発足時)

 

(1)既存原子力法を「100日以内に原子力推進をやめる」よう改正する。今後は既存炉の安全規制のみ行う。
(2)さらに既存原発の安全点検をする。今の規制に従っているかどうか。今の原発の安全性を原子力産業界に 

証明を求める。動かしている側に安全性を証明させる。
(3)ウラン再処理を禁止する。原発使用済み燃料(MOX)は直接最終処分する。以前はウランを再処理をし 

てプルトニウムを取り出してから残りを最終処分していた(プルサーマル)。

(4)20年以内に原発を古いものから段階的に廃止する。高レベル放射性廃棄物は2030年までに最終処分を行う。

(5)原発事故などに備えた弁済準備資金を大幅に値上げする。

 

 

● 再生可能エネルギー法(EEG)の改正(2000,2004

 

 再生可能エネルギーの最低買取り価格の補償(発電規模に応じて) ⇒ 再生可能エネルギーの促進

 

【概要】

 1)送電網事業者は再生可能エネルギー資源からの電力を優先的に買い取らねばならない。

 2)送電網事業者が買い取った電力をその上流にある送電事業者は買い取らなければならない。

 3)最低買い取り補償価格は運転開始以来20年間支払わねばならない。

 4)発電規模と発電の種類による最低買取価格の補償額を設定。

(設備投資コスト削減により2004年に見直し)

 

【成果】

  再生可能エネルギーによる雇用促進: 約13万人(2005年現在)

  風力発電、太陽光、バイオマス、小規模水力発電、地熱発電事業の急成長

                  (再生可能エネルギーの割合が5年間で6%⇒11%に達する)

【関連政策】

  再生可能エネルギーに関する設備導入のための補助金支払い制度の充実

市場誘引プログラム(2003年以降):太陽光発電装置やバイオマス装置などの設置への融資措置。

助成制度の充実: 助成の対象設備は、温水暖房や室内用暖房装置のための太陽熱温水器、

木質ペレットなどを利用したバイオマス暖房装置、学校用の太陽光発電、地熱エネルギー、

並びにバイオガス設備やバイオマスコジェネレーションなど。

 【参考】

  ドイツでは、風力、水力、太陽、バイオマス、地熱によって、年間7000万トン以上のCO2が削減されており、再生可能エネルギーは、2004年、総エネルギー需要の3.6%(2003年は3.3%)、総電力需要の9.3%(2003年は8.0%)を占めた。

 

 

● 容器包装廃棄物令改正(2004〜5)

 

  リサイクル不可能なワンウェイ容器(缶、ビン、ペットボトル)に対する全国一律のデポジット制度

(預託金=回収による返金制度)の導入

 

 【内容】

 1)0.1〜3リットルのワンウェイ容器(ビン、カン)に入ったビール、ミネラルウォーター、

炭酸入り清涼飲料水は、デポジット対象となる。これは、ワンウェイ容器の市場占有率に

関係しない。また、デポジット料金は、統一的に25セント(約34円)となる。
2) 2006年5月1日以降、炭酸なしの清涼飲料水とアルコポップもデポジットの対象となる。
3)ジュース、牛乳、ワインそして環境に配慮した容器に入った飲料は、デポジット制度

対象外とする。

 

 【成果】

 ワンウェイ容器の回収率が増加。(50%台 ⇒ 95%にまで回復)

  リターナブル容器の利用率が50.2%(2002年12月)から59.2%(2003年6月)に上昇した。リターナブル容器関連事業において約1万4000人分の新たな雇用も創出された。

 

 

 

● 環境税の導入と二重配当(1999−)

 

  環境税の種類:石油税(ガソリン、ディーゼル、軽油)、ガス税(天然ガス、液化ガス)、電力税

                     ↓ 

石油は1リットル当たり4円からスタート、現在は20円程度まで引き上げ

電力は1kwあたり2円からスタート、1年毎に0.3円ずつ引き上げ、現在は4円程度に

 

  ★二重配当:「環境税を課し、その税収をうまく活用することによって、経済活動水準を改善する効果」

    ⇒ 企業の支払う社会保険料(社員の失業保険料)の補助に充当、雇用促進効果

 

★例外措置: コジェネレーション導入設備、再生可能エネルギーによる設備は税免除。

LRTなど環境にやさしい交通手段は電気税を50%以上減額される。

 

 【成果】 25万人分の雇用が創出され、CO2排出量が2000万トン削減された。

     

 

<その他>

● 省エネ政令、10万戸の屋根ソーラー計画、トラック課税(自動車重量税)などの実施

        ⇒ 温室効果ガス削減に効果(90年比で18%)、新規雇用創出

 

【参考】ドイツの環境税一覧(第1−第5段階)

 

石油税と
環境税

課税対象

石油税
1999/3/31

石油税+環境税額

1段階
1999/4/1

2段階
2000/1/1

3段階
2001/1/1

4段階
2002/1/1

5段階
2003/1/1

環境税分
2003年

電力税
セント/kWh

(新税)


1.02

+0.26
1.28

+0.26
1.54

+0.26
1.8

+0.26
2.05


2.05

車両用燃料税

ガソリン
セント/リットル


50.11

+3.07
53.18

+3.07
56.25

+3.07
59.32

+3.07
62.39

+3.07
65.45


15.34

ディーゼル
セント/リットル


31.70

+3.07
34.77

+3.07
37.84

+3.07
40.91

+3.07
43.98

+3.07
47.04

15.34

天然ガス
セント/リットル

6

+1.0
7

0
7

+1.0
8

0
8

0
8

2

液化ガス
セント/リットル

6

+1.0
7

0
7

0
7

+1.0
8

0
8

2

暖房用燃料税

軽油
セント/リットル


4.09

+2.05
6.14

0
6.14

0
6.14

0
6.14

0
6.14


2.05

重油
セント/リットル


1.53

0
1.53

+0.28
1.79

0
1.79

0
1.79

+0.71
2.5


0.97

天然ガス
セント/kWh


0.18

+0.164
0.344

0
0.344

0
0.344

0
0.344

+0.206
0.55


0.37

環境税収

-

43億ユーロ
5,590億円

88億ユーロ
1兆1,440億円

118億ユーロ
1兆5,340億円

143億ユーロ
1兆8,590億円

187億ユーロ
2兆4,310億円

579億ユーロ
7兆5,270円

年金保険料

20.3%

19.5%

19.3%

19.1%

19.1%

19.1%

 

 

※数値の単位はすべて「セント」(1ユーロの100分の1、1セント=約1.4円)

 

 

 

 

 

◆ドイツの「持続可能な政策」成功の背景にあるもの

 

 ●「予防原則」の浸透: 「科学的・客観的に安全性が実証できない製品・物質は使用するべからず」

 

     (反対の考え):  「科学的に危険性が実証できない製品・物質は使用を禁止できない」

 

  ● コミュニティ自治意識: 「自分たちの住む町は自分たちで守る」(まちづくり、景観・環境保全)

 

●「やってみる」志向/思考: 「よいと思ったアイデアは、即実践する」(結果を先取り憂慮しない)

 

● 産業界に対する行政の主導的コントロール (行政と産業界が一体化しない)

 

 ● 環境運動団体、研究機関、NGOなどの発展と、行政、議員、自治体とのネットワークの発展

 

 

 

 

(以上制作 エコロ・ジャパン)2005年11月

 

 

(c) Copyright. ECOLO Japan. 2005.11.6. All Rights Reserved.