<エコロ・ジャパンによる 来日VIP講演報告>


   ユルキ・カスビ氏
  
(フィンランド国会議員・緑の党/国会「未来委員会」メンバー)
  インタビュー録要旨
        
2007年10月2日 於パレス・ホテル(東京)にて

                   

                ユルキ・カスビ(Jyrki Kasvi MP/Green League Finland)

       
   フィンランド国会議員(フィンランド緑の党/緑の連盟)、同未来委員会メンバー。
   1964年生まれ。ヘルシンキ工科大学でエンジニアリングを専攻。
   その後1994年に仲間ととも にフィンランド青年党を立ち上げ、同党解散後、緑の連盟
   (緑の党)に入党。
   1995年以降仲間とともに「インターネット選挙キャンペーン」を展開し、話題となる。
    2003年の総選挙でフィンランド国会議員に初当選(ウーシマー選挙区)。
   2007年の総選挙にて再選を果たす。
   現在、フィンランド緑の連盟・国会議員団副代表。
   
   個人ホームページ:  http://www.kasvi.org/index.php?eng
   フィンランド緑の連盟(緑の党)ホームページ: http://www.vihrealiitto.fi/



日本の官庁や国会議員団との会合などを重ねる目的で、フィンランド国会未来委員会のツアーに参加し来日中の、
フィンランド緑の党(緑の連盟)の国会議員、ユルキ・カスビ氏を突撃取材した。



―― フィンランドの政治についての印象は?

フィンランドでは女性の政治参画が他国と比べて相対的に進んでいるが、それでも若者は少数派だ。
そこで若者、若い女性を候補者に推すことで、若い世代の支持がとれる。彼らは他世代と比べてネットへのアクセス
が高いので、ネットを活用した選挙は効果的だ。
あとフィンランドの場合は、自治体数が少ないうえ、市町村や州と中央政府との距離が近い。
そこで自治体の現場事情や声を拾いやすく、中央政府に反映されやすいのもメリットだ。


―― 自ら立ち上げたインターネット選挙キャンペーンは成功したか?

90年代はまだフィンランドでもネットユーザーが10万人程度しかなく、若い世代をターゲットに、ブログや掲示板
などを活用し、アクセスしてきた読者の反応に毎日逐一回答するなど、双方向的なレスポンスを重視した。
それをきっかけにキャンペーンに参加する人間を勧誘することができた。
ネット選挙はとにかく費用が少なくて経済的ですむ。おかげで100万円以下で選挙を切り抜けることができた。


        


―― フィンランドの緑の党は躍進を続けているが、その秘訣とは?

他政党と違うのは、やはり平均年齢の若さ。また他党のメンバーが相対的にネットを駆使できるひとが少なく、
ネット戦略も依然それほど重視していないので、緑の党はそこで差別化を図ることができる。
幸いに、当選した国会議員の中でも私を含めてコンピュータ・エンジニアが何人もおり、彼らのネット環境は充実して
いる。毎回の選挙のたびに党支持層が確保されてきたことも躍進の理由のひとつだ。その意味では技術屋が政治家
になると、いろいろ専門的知識が駆使できて、メリットが多いと思う。


―― フィンランド緑の党の政策や業績は?

ラップランド(フィンランド北部にあるトナカイやオーロラで有名な地域)での森林保護など自然保護政策に貢献するため、
水素エネルギーの開発を進めさせたことが画期的。水素エネルギーは温室効果ガスもほとんどゼロで将来が期待される
新エネルギーのひとつだ。
フィンランドは大政党がなく、ひとつの政党だけで過半数を取れないので、少数政党から閣僚を送り出し、多くの政党の
合意によって政策を決定している。だからあらゆる場面での妥協が必要不可欠になっているし、原子力発電の導入決定
にしても、多数政党との妥協とはいえ、やむを得なかった背景がある。妥協しなければ、さらにひどい結果になっていた。

*フィンランド国会は2001年に核廃棄物最終処理場の建設を圧倒多数決で決定、さらに2002年に新規原子力発電所
  の建設を多数決で可決した。


―― フィンランドのエネルギー事情はどうなっている?

エネルギー資源の乏しいフィンランドでは化石燃料は海外からの資源に頼らざるをえず、選択肢も限られている。
これも原子力発電を導入することになった大きな理由のひとつだ。しかしバイオマスや風力発電などの割合も増えており、
今後再生可能エネルギーの割合を飛躍的に高めたいと考えている。


―― 「未来委員会」 はどんな仕事をしているのか?

未来委員会とは、主にネット時代を反映した、近未来のネット情報化社会のインフラ整備や技術開発などについて調査、
協議する場となっている。フィンランドは行政管理部門においてネット・インフラが充実しているが、情報格差の問題を
どうするか、ネット犯罪をどう予防するか、個人情報保護と表現の自由とのバランスの問題など、情報倫理的な問題に
ついても議題にのぼる。


―― 日本の政治風土についての印象は?

今、ヨーロッパで日本の政治を風刺したコミック本が出回っていて、それを読んできたところ(笑)。
それによると、日本は議会ではなく官僚行政が政治を主導している、議員立法の割合が少ない、未だに4割もの国会
議員が世襲議員だとか。とくに納得ゆかないのはインターネット選挙戦が解禁されていないことだ。
選挙経費がかかるうえ、これでは仕事に忙しい人や若者層の政治参加が見込めないのではないか。




(以上 文責・取材: 今本 秀爾  エコロ・ジャパン 代表)